藤本先生に質問!脳に関するミニレクチャー
第10回は、運動と脳の関係について、教えていただきました
運動をしなくなってから数年経ちますが、イライラしやすくなったり、ストレスがたまりやすくなった気がします。そんなときに久しぶりに運動したらとてもリフレッシュして、前向きな気持ちになれました。運動は脳にいいのでしょうか。
Q1.運動が脳にもたらす効果とは?
運動をすると、ストレスがたまってイライラしていた気分が爽快になり意欲がわいてくる、と言う経験をした人は多いと思いますが、その機序が大分明らかになってきています。また、運動には、物忘れなどの認知機能低下を防いだり、改善させる効果があるということも明らかになってきており、運動が脳にもたらす効果が注目され、多くの研究がなされています。
ヒトは本来動いていることが自然な姿だと思われますが、生活が変わり、忙しく仕事に追われ、対人関係のストレスが多くなり、身体を動かす機会は減り、睡眠も少なくなってきて、身体的にも精神的にもストレスが溜まりやすくなっています。
運動すると緊張を和らげてくれるセロトニンの分泌が増えますし、達成感や意欲を高めるドーパミンが分泌され、仲間で楽しむような場合には幸福感を感じさせるオキシトシンも分泌されます。運動の途中で、気分良くなり満たされた気分になるのはエンドルフィンによると考えられています。
疲労はエネルギーが枯渇してきた状態ですが、運動するとエネルギーを作り出しているミトコンドリアが増えるということが明らかになりました。運動すると脳の血流が増し神経栄養因子が増えます。特にBDNF(脳由来神経栄養因子)が増え、これには神経のシナプスを増加させ、脳の働きを良くする作用があります。
Q2.より効果的な運動方法とは?
運動により、気持ちがすっきりしたり、やる気が出てきたリという即効性の効果もありますが、健康になり、神経機能を良くするためには大事なことがあります。運動は強すぎず、筋トレよりは、有酸素運動が適していて、楽しみながら行えるということが大事で、徒歩、散歩、ジョギング、水泳、太極拳、などが良く行われています。運動の種類よりは行い方が大事で、姿勢にも気を配り、繰り返して、定期的に行うことが効果的です。
木々の緑に触れ、太陽光線を浴び、深呼吸をするといったことでセロトニンの分泌は増えます。こういったことも併せてより効果的にしましょう。改めて運動をするというのでは無くても、普段の生活で、階段の昇降、短い距離は車に乗らずに歩く、電車の中で立っている、など色々工夫して習慣化していくと持続的でより効果的となります。
昭和大学名誉教授(脳神経外科)
シナプソロジー医学顧問
藤本 司
2024年11月 | ||||||
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