元広島東洋カープの投手、江草仁貴さんは、広島東洋カープ在籍中に株式会社キアンを立ち上げ、介護事業の運営や営業に携わっておられます。
リクルートキャリアが運営する介護業界向けの情報サイトにて、江草さんが介護事業に携わるようになった経緯や、シナプソロジーを取り入れ利用者さんに提供しているという記事が掲載されましたので、ご紹介させていただきます。
https://helpmanjapan.com/article/7832
※介護施設やその他企業・施設等でシナプソロジーの導入を検討される場合は、
シナプソロジー普及会までお問合せください。
藤本先生に質問!脳に関するミニレクチャー
第10回は、運動と脳の関係について、教えていただきました
運動をしなくなってから数年経ちますが、イライラしやすくなったり、ストレスがたまりやすくなった気がします。そんなときに久しぶりに運動したらとてもリフレッシュして、前向きな気持ちになれました。運動は脳にいいのでしょうか。
Q1.運動が脳にもたらす効果とは?
運動をすると、ストレスがたまってイライラしていた気分が爽快になり意欲がわいてくる、と言う経験をした人は多いと思いますが、その機序が大分明らかになってきています。また、運動には、物忘れなどの認知機能低下を防いだり、改善させる効果があるということも明らかになってきており、運動が脳にもたらす効果が注目され、多くの研究がなされています。
ヒトは本来動いていることが自然な姿だと思われますが、生活が変わり、忙しく仕事に追われ、対人関係のストレスが多くなり、身体を動かす機会は減り、睡眠も少なくなってきて、身体的にも精神的にもストレスが溜まりやすくなっています。
運動すると緊張を和らげてくれるセロトニンの分泌が増えますし、達成感や意欲を高めるドーパミンが分泌され、仲間で楽しむような場合には幸福感を感じさせるオキシトシンも分泌されます。運動の途中で、気分良くなり満たされた気分になるのはエンドルフィンによると考えられています。
疲労はエネルギーが枯渇してきた状態ですが、運動するとエネルギーを作り出しているミトコンドリアが増えるということが明らかになりました。運動すると脳の血流が増し神経栄養因子が増えます。特にBDNF(脳由来神経栄養因子)が増え、これには神経のシナプスを増加させ、脳の働きを良くする作用があります。
Q2.より効果的な運動方法とは?
運動により、気持ちがすっきりしたり、やる気が出てきたリという即効性の効果もありますが、健康になり、神経機能を良くするためには大事なことがあります。運動は強すぎず、筋トレよりは、有酸素運動が適していて、楽しみながら行えるということが大事で、徒歩、散歩、ジョギング、水泳、太極拳、などが良く行われています。運動の種類よりは行い方が大事で、姿勢にも気を配り、繰り返して、定期的に行うことが効果的です。
木々の緑に触れ、太陽光線を浴び、深呼吸をするといったことでセロトニンの分泌は増えます。こういったことも併せてより効果的にしましょう。改めて運動をするというのでは無くても、普段の生活で、階段の昇降、短い距離は車に乗らずに歩く、電車の中で立っている、など色々工夫して習慣化していくと持続的でより効果的となります。
昭和大学名誉教授(脳神経外科)
シナプソロジー医学顧問
藤本 司
藤本先生に質問!脳に関するミニレクチャー
第9回は、脳地図について、教えていただきました
脳の詳細な「地図」がニュースとなっていました。脳の地図が解明されていくと、どんな可能性が広がるのでしょうか?
Q1. そもそも「脳地図」とは、何ですか?
脳は手足を動かし,ものを見たり聞いたりし、色々な感情を持って、考えたりすることを可能にしています。脳が全体で機能しているのか、局所で機能しているのか、歴史的な長い論争がありましたが、現在では、局所がそれぞれの機能をし、かつ密に連携し合いながら機能しているということが明らかになっています。これらの機能をどの部位(局所)が担当しているかを示したものが『脳地図』です。
Q2. 最近の研究で発表された「脳地図」とは?
今年(2016年)7月にワシントン大学の研究チームが、健康な若者の脳を磁気共鳴装置[fMRI]を用いて刺激を与えたときの反応を詳細に調べ、大脳皮質を180の領域に分けた脳地図を作製したと発表しました。今まで用いられていた脳地図は、1909年にブロードマンが大脳皮質の組織染色標本で神経細胞構築によって52の領域を分けて作成したものですから、目覚ましい進歩と言えます。
Q3.「脳地図」研究の歴史とは?
脳の機能の局在に関する研究は、1861年ブローカが言葉を話す言語中枢を発見し、1874年にはウエルニッケが言葉を理解する言語中枢を発見し、関心がたかまりました。そして1909年上記の「ブロードマンの脳地図」が作られ、脳地図の誕生となりました。世界大戦中には脳挫傷による脳の機能障害が多数みられ脳機能の理解が進みました。1952年には脳外科医ペンフィールドが脳の手術中に電気刺激をして脳の機能地図を作製し大きく進歩させました。これにより、脳の手術時に重要な機能障害を避けることが可能になりました。
Q4. 今後さらに「脳地図」の研究が進むと、どのような可能性があるのでしょうか?
1960年以降はCT, fMRI, PET, 光トポグラフィーなど種々の診断法が使えるようになり、脳の局在や機能が急速に明らかにされてきています。今回出された脳地図もこれらの手段を駆使して行われたものです。今後も、脳地図はさらに詳しくなっていくでしょう。そして現在は大脳皮質に関してですが、脳の深部や小脳をも含む脳全体の脳地図が出来ていくと思われます。脳地図が詳しくなるということは、それだけ脳のことが明らかになってきた証であり、それによって機能の解明も進みます。脳の局所の活動電位を用いてブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)などの研究が進んできていますが、これらとも相互的に作用し脳の機能の解明が進んでいくと考えられます。
昭和大学名誉教授(脳神経外科)
シナプソロジー医学顧問
藤本 司
藤本先生に質問!脳に関するミニレクチャー」
第8回は、記憶力と睡眠について、教えていただきました
【第8回】 記憶力と睡眠
『試験に向けて暗記勉強をしますが、なかなか覚えられません。そもそも、人間の脳はどれぐらい多くのことを記憶できるのでしょうか?また、徹夜をすると、頭がボーっとして、脳が働いていない感じがします。脳と睡眠にはやはり深い関係があるのでしょうか?』
Q1.脳はどれぐらい多くのことを記憶できるのでしょうか?
「もう覚えられない、もうだめ!」と思う時には、「脳にはさらに記憶できるスペースはもう無くなったのではないか」と心配になりますが、脳の神経細胞やシナプスの数を考えると、天文学的な数のネットワークがあり、脳の記憶できる潜在的な容量は無限に近いとも言えます。しかしながら現実的には、『その時の脳の状態がどうか』、ということと、『どのように使うか』で記憶の容量が大きく制限されてしまいます。
Q2.睡眠が脳に与える影響は?
多くのストレスを抱えていたり、身体が疲れ過ぎていたり、寝不足が続いたり、食事が十分摂れていなかったりすると脳は十分働くことが出来ません。睡眠中、脳はタダ休んでいるのではなく、大量のエネルギーを使って活動し続けています。日中にあった膨大な記憶を整理し、必要なものは長期記憶に保存し、次の日も様々な活動がすぐ出来るように調整していることもわかりました。
睡眠にはノンレム睡眠期とレム睡眠期があり、眼球が動いたりするレム睡眠期には夢を見たり、記憶の整理をし、定着させていると考えられます。偏桃体が活性化し、感情がかかわった夢が多くなり、大事なことを判断して記憶してると考えられます。ノンレム睡眠期には深い睡眠となり脳を回復させ、長期記憶に固定していると考えられます。良い睡眠(熟睡)を取ることがとても大事です。
Q3.記憶力アップに効果的な脳の使い方は?
脳が良い状態にあっても使い方で大きく変わってきます。興味を持っている内容だと理解も記憶も進みますが、関心のないことだとすぐ疲れてしまいます。視点を変えて、興味を持てるように工夫したり、人に説明するつもりになると覚えやすくなります。理解して、他と関連付けて覚えると記憶しやすくなり、繰り返しが大事です。声に出したり、手を動かしたり、具体的にイメージしながら行うのも効果的です。疲れたら頑張りすぎず休憩します。身体を動かし、深呼吸し、糖分の補給も有効です。無理をし続けていると、古い脳の感情的なものが強くでてきてイライラが募り、自律神経にも影響してきます。中断し、外の景色を見たり、音楽を聴いたり、気分転換を挟むのも効率を良くしてくれます。いくら使っても、脳にとってはわずかな部分を使っているにすぎません。工夫して、より記憶力をアップしてください。
昭和大学名誉教授(脳神経外科)
シナプソロジー医学顧問
藤本 司
「藤本先生に質問!脳に関するミニレクチャー」
第7回は、男性と女性の脳の違いについて、教えていただきました
【第7回】
「男性は論理的で女性は感情的」と聞いたことがありますが、男性と女性の脳で違いはあるのでしょうか?
Q1.男性の脳と女性の脳では、形態的な違いがあるのでしょうか?
男性脳に比べ女性脳では、左右の脳をつなぐ神経線維からなる脳梁の膨大部が大きく丸みを帯びています。同じく左右の脳を連絡している前交連も女性脳で太くなっています。
脳梁膨大部の繊維は左右の後頭葉、側頭葉の後ろの部分を連絡しており、言語野も含まれています。前交連は情動の中枢である偏桃体などを含む大脳辺縁系の左右を連絡しています。男性脳では視床下部にある INAH3 という神経が大きくなっており、男性ホルモンに非常によく反応し、男性の性行動に深く関係しています。そして、女性脳の脳下垂体は周期的に生殖腺刺激ホルモンを出しますが、男性脳ではそのような機能は無くなっています。
Q2.男性脳と女性脳の違いはどのようにして生じるのでしょうか?
原型は皆女性脳ですが、胎生3~4.5か月のころ、男児の精巣で作られた大量の男性ホルモンであるアンドローゲンが作用して(アンドローゲンシャワー)男性脳になるのです。
女児ではアンドロゲンはほとんど出ないので、このアンドロゲンシャワーの有無により、男性脳、女性脳が形成されます。
Q3.男性脳と女性脳で機能に違いがあるのでしょうか?
PETや光トポグラフィー(近赤外線計測装置)で脳の使い方を見ることが出来ます。「考え事」をしているとき、女性は左右の脳を均等に使いますが、男性はある部分を集中して使う傾向があります。
言語担当の脳は左脳と言われていますが、女性では左脳を基本にしながらも、右脳でも言語を操れる人が多く、脳梁が太い女性ほど言語を流暢に使えるという報告もあります。
女性は、話が好きで、弁が立つのも両方の脳をより連携させて使っているからかもしれません。言語の発達による、複雑な計算、論理的な思考も左脳が中心になって行っていますが、部分的に集中して用いる男性脳の方がより得意である傾向があります。
女性は言語能力に優れ、男性が空間認知機能に優れているというデータもありますが、男性脳では右脳を部分的に集中して用いる傾向があるからと考えられ、女性ではより全体を用いることで本能的な直観力が機能しやすいと思われます。ジョンズ・ホプキンス大学の研究では12~14歳の生徒5万人に算数のテストをしたところ上位5%は男女同数でしたが、大学認定資格用の推理、推論能力を見る数学のテストではトップクラスは圧倒的に男性でした。計算力では女子が優れ、理論的理解では男子が優れていたとしています。
Q4.感情面やストレスに対する抵抗性などにも違いはありますか?
女性の脳では大脳皮質と大脳辺縁系との連携がより強く、女性の方が情緒が細やかである可能性が考えられる一方、情報が多すぎて情緒不安定になる傾向があるかもしれません。また、大脳皮質に影響を与えるストレスを受けた場合、大脳皮質を集中して部分的に使う傾向がある男性脳の方が早くダウンしやすい傾向が考えられますが、女性脳ではそれほど集中していず、むしろ右脳、左脳を使い分けるためか、ストレスに対してはより強い傾向があるようです。
Q5.女性脳、男性脳の差は補完的なものでしょうか?
男女の、感じ方、考え方、行動には環境や教育など後天的な因子も大きく関係していますが、先天的にも、女性脳、男性脳の違いが存在することが分かります。個々人では人様々で、男性脳、女性脳という差はあくまで全体の傾向を見た場合のことですが、力強く生きて行くためには両者の特徴は補完的なものであり、自然の妙が感じられます。
昭和大学名誉教授(脳神経外科)
シナプソロジー医学顧問
藤本 司
「藤本先生に質問!脳に関するミニレクチャー」
第6回もわかりやすく丁寧に質問にお答えいただきました
【第6回】
「糖質オフ」の飲食品や、「糖質制限ダイエット」の書籍などを目にしますが、
「糖質制限」は本当に健康に良いのでしょうか?脳へは、どのような影響があるのでしょうか?
Q.炭水化物(糖質)制限が注目された背景は?
「糖質制限」、「糖質制限ダイエット」は「炭水化物ダイエット」、「ローカーボ(低炭水化物)ダイエット」とも呼ばれており、肥満対策として体重をコントロールする目的で炭水化物(糖質)摂取を制限するこの方法は大分人気があります。
身体を動かすことが少なくなり、食べ物が豊富になり肥満が増えてきたこと、脳卒中、糖尿病など生活習慣病とその予防に非常に関心がもたれてきていること等が大きく関係していると思われます。
Q.炭水化物(糖質)ダイエットとは?
糖質はエネルギー代謝系が脂質代謝系とリンクしているため、糖質を余分に摂取し過ぎた場合は脂肪として体内にどんどん蓄積されてしまいますので、これを防ぐために炭水化物を極力抑え、体脂肪の蓄積を失くそうとするのが「ローカーボダイエット」で、1970年代に米国のアトキンスによって提唱された「アトキンスダイエット」がその代表です。彼は肥満を起すのは炭水化物だと提唱し、ステーキ、卵、バターなどは制限せずに食べながら体重を減らすことが出来ると説き、1日糖質50g以下の制限を行うという極端な糖質制限でした。
Q.炭水化物(糖質)ダイエットのリスクは?
全エネルギー摂取量の50%以上は炭水化物でとるのが基本で、そうしないと、代謝障害等で様々な障害が生じてきます。炭水化物は細胞の活動に必要なエネルギーを供給しており、特に脳では唯一のエネルギー源が炭水化物が分解したブドウ糖であり、何もしていなくても脳のみで1日120gの糖質が必要だということからも極端な方法だということがわかります。この方法は大分流行しましたが便秘、頭痛、脱力感、筋けいれんなどの障害がで、死亡リスクが高くなることが報告されています。
糖質が不足してくると、肝臓のグリコーゲンが使われ、進むと肝機能障害が生じてきますし、蛋白質から作られたアミノ酸が糖に変えて(糖新生)使われてしまい、体の組織が壊されてきますので、種々の障害が出てくることになります。
Q.理想的な食事のとり方とは?
体脂肪の蓄積を減らすには筋肉を使うことが必須ですし、食事は、とりすぎる傾向がある炭水化物を控えめにし、脂肪も控えめにして、三大栄養素のバランスを取りながら(炭水化物が約60%, 蛋白質約15%、脂質約25%以下が理想とされている)、野菜、大豆製品、海藻、乳製品なども併せて、偏りのない食事を目指すべきです。
昭和大学名誉教授(脳神経外科)
シナプソロジー顧問
藤本 司
「藤本先生に質問!脳に関するミニレクチャー 」の第2回は、「頭を使うとお腹が減る?」について教えていただきました。勉強するとお腹が減る(?)と言われますが本当でしょうか?
【第2回】 「頭を使うとお腹が減る?」
Q.脳は大食い?
脳は体重の2%しかありませんが、身体全体のエネルギーの20%を使う大食いの臓器なのです。
Q.脳のエネルギー源は?
脳はどの臓器よりもエネルギーを使うにもかかわらず、脳のエネルギー源は通常はグルコース(ブトウ糖)のみなのです。しかも、脳に蓄積できるグルコースはほんのわずかなので、常にエネルギーを補給しないといけません。
Q.脳はグルコースをどれくらい使う?
何もしないでいても、脳は1時間に5g、すなわち1日で120gのグルコースを消費しています。勉強したり、熱く議論したりする時には、さらに多くのエネルギーが必要で、多量のグルコースが燃焼します。深い睡眠中でも覚醒時の40%のエネルギーを消費し続けています。
Q.空腹を感じる仕組みは?
空腹感は、血糖値(血液内のグルコースの濃度)が下がり、それを視床下部にある空腹センターがキャッチすると感じるようになっています。血糖値が下がると、肝臓に蓄えてあったグルコースで血糖レベルを保とうとしますが、なお血糖レベルが低下すると空腹を感じるのです。脳を使うとお腹が減るというのは本当ですし、身体が一生懸命知らせてくれているのですね。
Q.頭を使った時は甘いものがおすすめ?
頭を使って疲れた!!というとき、早く回復させるのには砂糖がいいですね。砂糖を多めに入れたコーヒーを飲んだり、飴玉をなめたりなど。砂糖のグルコースは速やかに吸収されて脳のエネルギー源になります。血糖を急激に高くしたり、高く維持したりしない限りはインスリンが作用して肝臓や、筋肉に取り込んでくれますので、正常な場合は問題ないでしょう。ただし、とりすぎてさらに余分になったグルコースは中性脂肪となり脂肪組織にたまりますので要注意。
Q.勉強するとダイエットになる?
ダイエットは体脂肪が大きく関係してきますので、別の話と考えた方がいいでしょう。逆に、空腹感を感じると脂肪を多く含む食べ物も多量に食べてしまうことになりかねず、ダイエットとは逆になりかねないので要注意です。
昭和大学名誉教授(脳神経外科)
シナプソロジー顧問
藤本 司
今回より、不定期で「藤本先生に質問!脳に関するミニレクチャー 」を掲載します!
脳について興味を持ったり、さらに知識を深めたりするのに役立ててみてください。世の中にはさまざまな情報が溢れていますので、専門家である昭和大学名誉教授(脳神経外科) 藤本先生に正しい知識を教えてもらいましょう!
【 第1回 】
サヴァン症候群の人は一度見ただけで、写真のような絵 が描けると言われますが、もともと脳にはそのような能力が備わっているのでしょうか?
サヴァンとは「すぐれた知能の人」と言う意味で、驚異的な記憶力や芸術的才能など様々な分野で能力を発揮することで知られています。カレンダー計算能力では過去4万年前の日にちの曜日を答えたり、質問にもあるように、一瞬見ただけの複雑な景色を描いたり、ピアノを一度も習ったことが無いのに一度聞いた曲を再現して弾いたり、すさまじい速さで計算したり、教わらなくても瞬時に素因数分解が出来たりと、本当に驚かされます。しかしながら、理論的に何かを考えたり、抽象的な言葉の意味を理解したりするのは苦手なことが多いようです。
自閉症患者に多く、数%~10% がサヴァン症候群との報告もあります。病気や事故によって脳に損傷を負ってなる人もいます。左脳で著しい機能障害がある場合が多いようです。
極めて狭い範囲のことがらに異常に興味を持ち、同じことを際限なく繰り返す集中力などが関係していると思われ、「左脳の機能障害を右脳が補ったことによって生み出される能力」(精神科医トレツファート)ではないかとも推測されています。
普通の人がすぐ忘れ去る短期記憶も、長い時間保存される仕組みで記憶してしまうと考えられ、羅列された文字や数字を丸暗記するのが得意で、その際感情も思考も連想も挟まれず機械的に記憶し思い出しているようです。
サヴァン症候群の人の記憶システムは、普通、運動や色々な操作など、意識されずに行っている「手続き記憶」に関係している、脳深部の「大脳基底核」が深く関係している可能性があります。
昭和大学名誉教授(脳神経外科)
シナプソロジー顧問
藤本 司
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