「藤本先生に質問!脳に関するミニレクチャー」
第5回は、「読書で脳が休まるの?」 という質問にお答えいただきました
【第5回】
「読書で脳が休まる」と聞いたことがあるのですが、脳が休むとは、どんな時なのでしょうか?
以前、出版社で働く友人から 「この本は読みやすくておもしろいよ、忙しいだろうけど脳を休めるには丁度いい本だ。ぜひ読んでみて。」と勧められたことがあります。読書で脳を休めることができるのか!と目から鱗でした。私的にはなんだか脳が休めた気がしましたが、実際の所、脳が休まるとはどういう時でしょうか?
Q.読書しているとき、脳はどのように活動しているの?
読書しているときには、意識を集中させ、理解しようとし、記憶と照らし合わせて判断し、それを記憶し、次に進むということを普通は左脳を中心に行っています。脳はこのために大量のエネルギーを使って、関係する脳組織を一瞬一瞬切り替えたり、集合させたりして活動しています。
Q.脳は活動するためのエネルギーをどのように作っているの?
脳はエネルギーを自らは蓄えておけないので、つねに酸素とグルコースを用いてミトコンドリアで大量のエネルギーをつくり、代謝に伴う老廃物を処理しながら行っています。
Q.難しい本や興味のない本を読んでいるときの脳の状態は?
読書している内容が、難解であったり、あるいは、興味がないのに読まなくてはいけないと思っているような場合は、偏桃体を中心とする情動的なことも加わり、より大きなストレスになってきます。すなわち交感神経系の緊張は高まり、より大量のエネルギーを消費することになります。エネルギーが枯渇し、老廃物が蓄積してくると、脳の機能は十分にはできなくなり、理解力も落ち、集中力は低下し、“疲れた!”と思うようになります。これは“脳が疲労回復を要求している知らせ”と言えます。
Q.では、読書で脳が休まるとは、どんな時?
一方、読書することで、逆に、気持ちが落ち着いてきたリ、“脳がリフレッシュされる”ように感じ、ますます引き込まれてしまうこともしばしば経験します。理解しやすく、興味がある内容であったり、描かれている世界が心を安らかにしてくれるものだったりする場合には、努力して集中する必要もなく、ストレスにはなりにくいです。交感神経系の緊張はゆるみ、セロトニン系の抑制が優位となり副交感神経系優位の状態となるため、脳の活動のためのエネルギー消費はあるものの、少ない量でバランスもとれた状態で読書ができていると考えられます。
昭和大学名誉教授(脳神経外科)
シナプソロジー顧問
藤本 司
2024年11月 | ||||||
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